東京高等裁判所 昭和59年(う)486号 判決
まず(一)の所論(罰金不完納の場合に労役場留置1日を2,500円とした原判決の換算額は,社会一般の労働対価など被告人の経済的稼働能力と対比して不当に低価であるという主張)について検討すると,罰金刑の言渡しを受けた者が罰金を完納することができない場合の労役場留置は,刑の執行に準ずべきものであり(最高裁判所昭和24年10月5日大法廷判決・刑集3巻10号1646頁,同昭和25年12月8日第二小法廷判決・刑集4巻12号2529頁参照),留置の期間は,言渡した罰金刑の刑罰的効果に相応すると認められる期間を基礎として定められるべきものであって,留置1日にあたる換算額は,右の留置の期間を算定するための手段にとどまるものである。したがって,その換算額は,必ずしも自由な社会における勤労の一般的報酬額又は被告人の稼働能力と比例して決定されるべきものではなく(前記各最高裁判所判決参照),刑法18条が留置期間の上限下限を法定していることを考慮し,科すべき罰金額,物価・国民所得などの経済情勢,被告人の職業・収入などの個別的事情をも参酌しつつ,当該罰金刑の執行に相応する留置期間となるように,裁判所が合理的な裁量に基づき決定すべきものである。この見地から本件の換算額をみると,被告人が靴職人としての技術を持ちながらも昭和57年1月ころからは仕事に就かずいわゆる呑み行為による利益で生活して来たこと,同種事案に対する換算額の過半が本件と同じ2,500円又はそれ以下であると認められること(当審における事実取調の結果に徴すると,昭和58年中に東京地方裁判所で言渡されて検察庁に記録が送付ずみの競馬法違反事件における換算額は,2,000円が12名,2,500円が4名,3,000円及び4,000円が各1名,5,000円が5名であった。)などの事情があるから,被告人に対し留置1日を金2,500円と定めた原判決の換算額が不当に低価であるとは考えられない。